(あ、私が買おうと思ったのに……!)
しかし、倫太郎が持っていたのは、コーラだった。
炭酸が飲めない七海子は、コーラを返されても困ると思い、諦めて自分には新しくグレープフルーツジュースを買った。
待合所の長椅子に、ちょこんと座る。
缶をプシッと開封し、ごくん、ごくん……と喉を鳴らした。
冷たくさわやかな柑橘系の香りがすっと通り、いくらか気持ちが落ち着いた。
そんな七海子の様子を窺っていた倫太郎は、お、いいの? と、ちょっと驚いたようにしていたが、
そのうち勝手に購入したコーラをぐびぐびと飲み始め、七海子からすこし離れた場所に、どさっと腰かけた。
お互い、なにも喋らなかった。
七海子は倫太郎が保健室に行った後、やっぱりすぐに早退してしまったのか、とか、
きちんとその事は先生に言ってきたのかなど、気になる事は多々あったが、それどころではなかった。
缶の中身を半分ほど飲みほしてから、七海子は覚悟を決めたように、けれどおそるおそる、倫太郎に言った。



