臆病者の鬼遊び

 


七海子は日傘を畳むと、ポケットから小銭入れを出し、販売機にチャリチャリっと百円玉を投入した。
 

さて、どれにしようかな……と思ったその瞬間。
 

背後から伸びた手が、ボタンを押した。
 

驚いて振り向くと、そこには……じろりとこちらを見下ろす、倫太郎の姿があった。


「なっ……な、なっ……なんで……!」

「そっちこそ」
 
倫太郎は、冷めたように言い放った。


「授業、さぼったんだ?」
 

そして彼は何の脈絡も無く、七海子の頬っぺたを、むにっと摘まんだ。


「………!?」
 

次々と繰り広げられる予想もつかない行動に、七海子はしばらく混乱していたが、


倫太郎が急に指に力を込めたので、頬っぺたがきゅっと痛んだ。


「……いひゃい!」

 

七海子が抗議すると、意外にもさっさと放してくれた。


倫太郎は、何事も無かったかのように身を屈めると、さっさと販売機から飲物を取り出した。