倫太郎の中に、悪い心が芽生えた。
もう一度、この柔らかさを知りたいと思ってしまった。
顔を近づける。
自己嫌悪と好奇心と、なんだかよく分からない欲望のようなもので、頭がいっぱいになる。
――昨日の夜、ずっと七海子は傍にいた。
『発作』を起こした倫太郎をなだめて、
何時間もずっと、角を握ったり、額に触れてくれていた。
時折、心配そうにのぞきこんで来る彼女に、どれだけ心が救われただろう。
今まで本家では、発作が来るたびに暴れ、拘束され、閉じ込められてきた。
罵声を浴びせられる事もあった。
余計に腹が立って、暴れ尽くしてやることもあった。
全身傷だらけになった。
そんな思いばかりしてきた。