倫太郎は、低い声で言った。
「すまなかった」
「何が?」
「何がって……さっき」
倫太郎は手を伸ばし、七海子の喉元に触れようとして、迷って、やめた。
遠慮がちに指を差すに留めて、
「……苦しかったろ」
「あ、忘れてた」
彼は、七海子の間抜けた言葉に、目を見開いた。
驚いていた。
本家には、彼にぶつかって転んだだけで、顔を合わせる度に数年もねちねちと厭味を言ってくる者すらいるのに……!
「……でも、これに懲りたら、あまり不用意に俺に近付かない事だな。
『鬼』が表に出た時の俺は、何をするか分からないぞ」



