これでも、何十年か前は立派に機能していたのだろうが、女の二人暮らしではなかなかそうはいかない。
使っていない部屋にはホコリが溜まり、クモの巣が張り、同じ家の中とは思えない惨状を繰り広げている。
庭だって、久しく手入れをしていないので、木や草がぼうぼうに生い茂っている。
でも、だからといって引っ越す事は許されなかった。
この屋敷は、本家によってあてがわれたもので、至る所に封印だの『鬼』に関する資料だのが収蔵されているため、
引っ越しやその他もろもろの作業に、とんでもなく人手もお金もかかるらしかった。
要するに、七海子と花代さんが我慢していればいいだけの話である。
もっとも、日々の暮らしは不便なばかりでもない。
それに七海子はこの家で生まれ、この家で育ってきた。
愛着もあるし、面倒事も日常ですらあった。
でも……だからこそ、その『日常』が崩れるのは、怖かった。



