やがて正気に戻ったのか、彼はばっと手を放し、七海子の上から素早く退いた。
倫太郎は虚ろな瞳で、放心していた。
しばらくすると、彼も遅まきながら、自分の仕出かした事に気付いたようだった。
信じられないというように、わなわなと己の両手を見つめていた。
「……げほっ……げほっ……!」
彼女が咳き込みながら体を起こすと、倫太郎はこの世の終わりのように顔を歪めた。
七海子の瞳には、涙が溜まっていた。
苦しかった。
例え数秒でも、息が出来ないのは、こんなにも恐ろしい事なんだと思った。
「……今の、どうしたの……」



