その瞬間、倫太郎が七海子の目前に拳を突き出した。
だが、はっと身を固くし、目を瞑ると、衝撃は想像していたよりも、ずっと小さなものだった。
額に、軽いでこぴんを食らっただけだった。
しかし七海子は驚きのあまり、加熱中の鍋に手をぶつけ、熱いと叫んだ。
結果として原因を作ってしまった倫太郎は、慌てて七海子の手を掴み、だばだばと水道水に当てた。
「……まったく!
どうしてお前はこう、怪我だの体調不良だのが多いんだ!
そそっかしいにも程があるだろう!」
「え、でも怪我は昔から多かったし……!」
「生傷だらけで威張るな!
痕が残ったらどうするつもりだ……!」
目を、ぱちくりとさせた。



