臆病者の鬼遊び




倫太郎は、夏期講習の存在を忘れていたのだ。
 

彼が家から一歩も出なかった事は、彼の浴衣姿が証明している。


ちなみにその着物は、彼の寝間着だった。
 

とりあえず倫太郎が黙ってしまったので、仕方なく七海子は玄関を上がり、夕食の支度をした。


(今日は、早く出来るもの……素麺ゆでよう)
 

大鍋でお湯を沸かしていると、なんと倫太郎がふらりと台所に現れた。
 

慌てて七海子が振りかえると、倫太郎は先ほどと同様に、むすっとしていた。


冷蔵庫のお茶を取りに来たのかと思いきや、そうではないらしい。
 

緊張が走る。
 

七海子は、思わず目線を逸らした。
 

倫太郎は黙りこくっている。
 

数分後、その重みに耐えられなくなった七海子が、口を開いた。


「何か、用……?」