臆病者の鬼遊び

 


――七海子は、きちんと手当てをしたのだろうか。


傷の深さはどのくらいなのだろう。


猫の爪の長さは……。


そればかりが気になってしまう。変な気持ちだった。


焦っているようだ。


自分の事でもないのに。


七海子はどうして、あんなにも一生懸命に猫を庇ったのだろう。


好きだから、とは言っていた。


しかし次に、あの茶色い毛むくじゃらが、そんなにも価値のある生き物なのだろうか、という疑問が浮かんでくる。


不法侵入者の上、懐きもしない猫。


倫太郎は、動物が嫌いだった。


どんな動物も弱いくせに、必ず彼を怖がるからだった。


倫太郎が、どんなに彼らを好いて、敵意無く接しても……。


(猫、か……)
 


七海子は、弱者たる猫を庇った。


そして、信じられないくらい大きな声で、猫の弁明をした。