臆病者の鬼遊び




急に引っ張られる力が無くなった反動で、つんのめりそうになった倫太郎は、何とか踏みとどまる。


しかし、何故七海子が急に自分を解放したのか分からなくて、彼はじろりと七海子を見た。


七海子は、わざとらしく余所見をしつつ、両手を後ろに隠していた。


その行動から、手の傷を隠している事は明らかで、自分の袖を見ると案の定、血が付いていた。


こんなにも出血していたのか、とまた猫が憎くなる。


倫太郎は、逃げかけた七海子の手を掴み、傷を見た。


すると七海子は即座に、


「い、痛くないから……このくらい大丈夫だもん! 


だからタビちゃんを許して! 


事件だって、不起訴なら加害者に罪は無いの!」
 

倫太郎は彼女の言葉を聞いているうちに、さすがに呆れてきた。
 

次から次から、猫を庇う言葉が飛び出してくる。


自分のこととなると石のように黙って耐えるくせに、奇妙な奴だ、と思う。