「何で止めるんだ!」
「そっちこそ……追いかけて、何する気……!」
「殴ってくる!」
「だめぇっ!」
必死に訴えた。
倫太郎が七海子を見つめ、驚いたように固まる。
「ね、猫のっ……猫のした事だから……!」
タビちゃんは、すばしっこい猫だ。
きっと捕まらない。
だけど、倫太郎なら簡単にタビちゃんを探し出し、本当に殴るかもしれない。
もしそんな事になったら、あのタビちゃんの柔かい体は、どうなってしまうのだろうか。
一瞬でそんな恐怖が、七海子の頭を駆け巡った。
袖を掴む腕に、力がこもる。
じわりと赤く、染み出した。
パニクって猫に罪はない、と連呼してた七海子は、倫太郎の袖に付いた赤い染みが目に入った瞬間、手を放した。



