琥珀の記憶 雨の痛み

「私は――」


尚吾くんのことを想う、ナツのことを考えた。
彼に惹かれつつあった、自分の気持ちを考えた。

尚吾くんの優しさとか、気遣いとか、彼が作る居心地の良い空気感とか、笑顔とか……このところ急速に近づいていた、私たちの距離とか。


少しだけ短くしたのに、誰にも気づいてもらえなかったスカートを握りしめた。


ナツみたいに。
はっきりと断言できるくらい、本当に。

私は彼のこと、好きになってた?


スカートを握りしめたまんま、へらりと笑う。

変わらないのだ、そう簡単には変われないのだ。
ちょっと頑張ったつもりで、変わったつもりになったところで。

誰にも気付かれない、程度なんだから。


小さな頃から、我が儘を言わない習慣があった。
我慢できる。
裏を返せばそれは諦めグセなのだと、今になって気が付いた。


欲しい物も欲しくない、フリが出来る。
フリをしている内に、本当に欲しくなくなって。

――諦めることは、簡単だ。


「……莉緒?」


不安げに窺ってくるナツににやりと笑って見せると、少しだけ彼女の顔が明るくなった。

貼り付けた作り笑いで不安にさせるよりも、ふざけてからかうような笑い方は見抜かれにくい。
……そんなことを知ってる自分が、ちょっとだけ、嫌だ。


「早く言ってよ、協力するのに!」


必要以上に強くナツの背中を叩く。
彼女は「痛い!」と叫びながらも、頬を朱く染めて嬉しそうに笑った。