琥珀の記憶 雨の痛み

ナツは「もうっ!」と小さく拳を作って、怒ったフリをした。

「最初っからずっと真面目だよー!」


――今さら。
聞きたくない、とか、言えないじゃん。

もう、聞く前から……分かっちゃった気がするけど、さ。

ナツの好きな人は、その二択の中にいるんだろう。
そしてそれは、多分。


「ホントにいいの?」と、ナツはもう一度念を押す。

「最初に莉緒の気持ち、聞いてからにしようと思ったんだよ……?」

そう言って、視線を少しだけ落とした。


それはきっと、私が彼をっていう可能性を、よく考えてくれたからなんだろう。

その上でこの話を出してきたってことは。
それだけ、抑えられないくらいの気持ちがあるってことなのだ、恐らく。


「ナツ……タケのこと?」


彼をタケと呼ぶ彼女の前で、『尚吾くん』とは、呼べなかった。

俯いたまま小さく、でも確かに、ナツは頷く。


ツキン、ツキン、心臓が鳴る。
痛い、かな。少しだけね。
ほんの少し、だけ。


「もしかして、私とタケが一緒に帰るの……やだった?」

ナツはハッとしたみたいに顔を上げた。
泣きそうな顔をして、ふるふると首を横に振る。

「そんなこと……っ」

と、言いかけた言葉を途中で飲み込んで。


「嫌、とかじゃなくて。でも……羨ましかった」

そっか。そうだよね。
逆だったら、私もやだもん。


「ねえ、莉緒は……?」


恐る恐る、そう聞いてくるナツに。
何て答えるのが、正解なんだろう。