琥珀の記憶 雨の痛み

「ケイ! お疲れ!」

「莉緒。ヤバかったね今日。来たら全レジ行列出来てて超びっくり」

「うん、私今日はじめて1人でレジ開けた」

「見たよ! デビューおめでとう」


仕事中に1回もケイと話す時間がないなんてことも、今までなかったかもしれない。

「良いレジっ娘に育ったね」なんて保護者目線なケイの発言にちょっと浮かれたりしながら、更衣室までおしゃべりしながらのんびり歩く。


「ところでケイ、今日ちょっと来るの遅かった?」

と、気になっていたことを聞いてみた。


普段は同じ時間に入ることが多いのに、入りの時に会わなかった。
いつの間にレジに入っていたのかも気付かなかったし。


「あー、うん。最近ちょっとね、バタバタしてんだよねー学校の方で」

「そうなの? なんか行事近いとか」

「あ、そうそう。まとめ役押し付けられちゃって」


よっぽどそれが嫌なのか、あんまり話したくもなさそうなうんざりとした顔だった。

でも、ケイにまとめ役ってなんだか分かるな。


「大変そうだね。でも、頼られてんだよきっと」

頑張れ、と背中を押すと、渋々みたいに苦い笑いが返ってきた。
これは、相当疲れてるのかも。


「やっぱ頑張んなくていい。無理しないで」

言い直すと、今度は綺麗な目を細めて小首を傾げながら微笑む。

うん、こっちが正解みたいだ。