琥珀の記憶 雨の痛み

「でもイレギュラーで、テンパっちゃって……。価格違いでクレームになりそうなところ、彼が助けてくれたんです」


青果コーナーの方へと視線を向けながら、経緯を説明する。

例のピーマンのお客様のことは、食品フロアの社員さんたちの間では既に問題視されてチェックされているようで、岡本さんは全て承知していると眉を寄せた。


「一レジ担当者では対応のしようがないと思って黙っていたけれど、そういうお客様がいらっしゃることはやっぱり共有しておかないと駄目ね……」

と、憂鬱そうに溜め息を吐く。


連絡が行き届いていなかったことを謝られて、

「知っていても、やっぱりどうすることも出来ないですよ」

と。
結局、売り場担当者でなければ上手くかわせない気がする。


だけど、岡本さんは首を横に振ってその言葉を否定した。

「知ってさえいれば、毅然とした態度を取れる。あの手のお客様を甘やかしたら、調子に乗って同じことを繰り返すだけよ」


なるほど、だった。
良い接客イコール、お客様の言いなり、というわけでは決してない。


ルールや仕組みにきちんと乗っ取って動かなければ店はいずれ崩壊するし、私たちはまず店を守らなければ、お客様へご満足をお届けすることが出来ない。

そんな話を少し聞かせていただいてから、私は通常業務へ戻った。