琥珀の記憶 雨の痛み

これで終わり、という気配を察したのか、ユウくんは指示が出る前に、早くもレジから社員コードを抜くためにテンキーを操作していた。


「そうっすね。裏で習ってるのとはやっぱ全然違ったっす」


思いの外素直に、彼がそう認めたから。

別にそう言われたわけではないのに、今まで私がやってるのを彼が鼻で嗤って小馬鹿にしてきた仕事を、認めてもらえたみたいでちょっとだけ嬉しい。


レジを抜けたユウくんと一緒に、清掃と閉店準備の指示を出しながら青果の社員さんが去っていった。

岡本さんはレジ横に立ったままそれを見送った後で、改めて「お疲れ様」と声をかけてきた。


「初めて1人でレジ開けたって?」

「あ、はい……すみません、許可出てなかったのに」

「いいのよ。元々マネージャーが忙しくてOK出すタイミング逃してただけで、十分ひとり立ちできるスキルはあったもの」


社員さん不在の中、現場リーダーとは言えパートさんの指示で、マネージャーの許可なく1人でレジに入ったことは正直少しだけ不安があった。

万が一何か問題があったら、1人制の指示を出したパートの木下さんまで責任追及されてしまう、と。


「忙しい時に突然の指示で不安だったでしょう。でも、良くやってたって周りから聞いたわよ」

「周りから……」


見ていてくれた人がいて、認めてくれた人がいる。
岡本さんの言葉に、心底ほっとして緊張が解けていった。