琥珀の記憶 雨の痛み

「あは」

作り笑いは、渇いた声になって口から漏れた。

「やだ。そう見えた?」


『そんなコトない』とでも言ってみせるようなその言葉だけで、上手く誤魔化せないだろうか。

だけど彼は苦笑して、「うん」と頷く。


ユウくんの言葉とタケの言葉は全然違うけれど、要約すれば同じことなのかもしれない。


『見下してんだろ、俺らのこと』
『ここじゃ異端なんだよアンタ』


中学の時や、私が通う富岡高校とは、ここは全然違う世界なんだ。

邪魔をするならこのグループから出ていけ、と。
ユウくんは分かりやすく攻撃的に、タケは優しくオブラートに包んで……同じことを言ってるように聞こえた。


なんだかすごく、居心地が悪い。

未成年が煙草吸うって、悪いことじゃなかったっけ。
どうして私が悪者みたいになってるんだろう。

なんか変、すごく変だ。


「ちょっと、莉緒大丈夫?」


タケとの間に割り込むようにしてケイが声をかけて来て、はっと気が付いた。

「あ、ごめ……ちょっとぼーっとしちゃった」

へらりと笑って誤魔化したつもりなのに、ケイの矛先はタケに向かう。


「もう。何か言ったんでしょ! 苛めないでよね、タケ」

「え、そんなつもりは……ごめん莉緒ちゃん。俺何か気に障るようなこと言ったかな」


困ったように頭を掻いて謝ってくるタケを見て、余計に分からなくなった。