琥珀の記憶 雨の痛み

メグは「えー」とか「大丈夫かなぁ」といつまでも渋っていたけれど、私はさっさと高校の制服に着替えてしまった。
のんびりしていて、あのミニスカートを強引に押し付けられたらたまらない。


「よしっ!」

意気揚々と準備完了を告げると、漸くメグも諦めたのか引き下がった。


ところが、下で待ってるアツシと合流しようという段になって、「ねえねえ、莉緒ぉ」と、切り出しづらそうにモジモジと声をかけてくる。

「何よ、そのネコナデ声」

苦笑まじりに答えると、照れ臭そうにへへっと笑った。


「あのね、今日。もしユウくんが来れなかったら、でいいんだけど……」


結局ユウくんは来るのか来ないのか分からないままなのか、と、それを聞きながら頭の片隅に『煙草ワンカートン』の約束が浮かんで消えて行った。


「うん、来なかったら?」と先を促すと、その後のメグはとても可愛かった。


「実はね。ユウくんの正社員昇格の話の方がやっぱり大きなことだし、本人誰にも言ってないみたいなんだけど。アツシもね、来月からバイトリーダーに昇格するの」

「え、そうなの!? 凄いじゃない、早く言えばいいのに。今日みんなに発表して、ユウくんのと一緒にお祝いしようよ!」

「ううん、それは本人が、ユウくんに花持たせたいと思うから。だから、ユウくんが来なかったらでいいの。そしたら、サプライズで……」


いいかな? と、メグはちょっと恥ずかしそうな上目遣いで。
私は即座に「もちろんっ!」と叫んだ。


強気で照れ屋で意地っ張りのメグが、あまり見せたことのない恋する女の子のカオだった。
可愛くて、幸せそうな。

どうしたら喜ぶのか、アツシのこと良く分かってて。
ずっと秘密にしながらも、気持ちよく彼を祝える方法を考えてきたんだろう。


素敵。
恋がメグを、こんなに可愛く変えるんだ。