琥珀の記憶 雨の痛み

「なんでこんな日まで制服なのよ、バカッ!」

「え……まずかった?」


まさかそんな。
だって彩乃ちゃんもいるのに、制服で出入りが禁じられているような、高校生お断りのお店に行くわけじゃあるまい。

ポカンとして聞き返すと、メグは盛大な溜め息とともに肩を落とした。


「別にまずくはないけど……富岡の女子高生って一目で分かっちゃうし、目立つよぉ」

「え。一体どんな店よ」

「まあそれは……着いたら分かるから。とりあえずさ、こっちに着替えて!」


既に先に着替え終わって私を待ってくれていたメグは、いそいそと自分のロッカーを開けると中から私服を取り出した。
行先のお店のことはあくまでも秘密らしい。


「ちょっと、なんで着替えキープ置いてるのよ」

思わず尋ねると「色々あるのよ」と意味深な答えが返ってくる。

気にはなるけど、あんまり詮索している時間もなかった。
アツシはもう下で私たちを待ってるはずだ。


差し出されたメグの私服を受け取り、富岡の制服が生む不具合については分からないままだけど、言われた通りにそれを借りようと思った。
思った、のだけど……。


「いや、メグ。これはちょっと無理だわ」

「なんでよっ! 私の服のセンスにいちゃもん付ける気!?」

「違う違う、メグの服はいつも可愛いよ。これも可愛いんだけどさー……」


トップスは一旦ハンガーにかけ、スカートのウエスト部分を片手で持って、反対の手で裾をぴらっと捲ってみる。
それから自分の身体に当ててみた。

うん、絶対無理だ。


「短いっ! 膝どころか太腿丸出しじゃないっ」

「何よ。私が露出狂みたいじゃないっ」

「ぶっ」

堪え切れずに吹き出した。

別に、メグは露出狂じゃない。
私よりも少し背の低いメグが着たら、この長さが可愛いんだ。
彼女の足は綺麗だし。

でも私が着たら、お目汚しの迷惑な露出狂だ。


「ごめん、私制服でいいよ。こっちの方が目立ちそう」

と、丁寧にお詫びして服はお返しした。