琥珀の記憶 雨の痛み

少し視野が広がって小さな起伏に富んだ日々。
気分は穏やかに高揚していて、概ね良好だった。


だけど常に奥底に淀んだように沈殿する、気がかりはある。


結局放置したまま方向性を決められずにいる、タケに対する自分の気持ちだったり。
何度か家を訪ねても、時間を変えて自宅に電話を入れても、ずっと留守で捉まらないケイの現状だったり。


――結局ケイとは連絡が取れないまま、私たちは、計画の日を迎えた。


アツシがかなり早い段階から手回ししてくれたおかげで、全員が都合を付けてくれている。
ただ1人ユウくんだけは、やはり最後まで曖昧な返事で参加の意思を濁してきたらしいが。


勿論私も、随分前から家でその話をして、母からの了承を取りつけていた。
珍しく自分から言い出した「夕飯もいらないし、帰りは遅くなる」という申し出を、母はむしろ嬉しそうに快諾してくれた。

『日付が変わる前に帰ること』
『帰りは1人にならないこと』
口うるさく繰り返されたのは、私の身を案じる言葉ばかりだった。


朝番だった彩乃ちゃんとナツ、今日はお休みだったタケは、先にお店に行っているらしい。
どんなお店なのかは、何故か私には秘密にされていた。


メグとアツシが付き合い始める前には良くみんなで通ったお店らしく、ナツとタケは久しぶりにそこに行けることもとても楽しみにしているようだった。

彩乃ちゃんは私同様、そこへ行くのは初めてらしかった。
同じ時間帯にあがったナツの案内で向かったのか、それともタケと待ち合わせをしたのかは――、分からない。

或いは、3人で一緒に向かったのだろうか。
それはそれで、複雑な構図だ。


「えっ! ちょ、ちょっと莉緒!」

「へ? どうしたのそんな焦って……」


仕事を終えた更衣室。
気がかりは一旦振り払いウキウキした気分に任せて着替えていた私をメグが呼んだ声は、妙に上擦っていた。