琥珀の記憶 雨の痛み

日頃の夕方からのシフトでは入れ違いになってしまっていたパートさんたちとも段々打ち解けてくると、若いからという理由でか、やたらと可愛がられ気にかけて貰えた。


夏休みなのに学校の制服で出勤しているのは、どうやら私が心配していたのとは違い、『熱心な学生』という好意的な心証を与えていたらしい。


「うちの子なんか」と、私と同年代のお子さんを比較して、パートさんが溜め息まじりに愚痴る。
もう少し上のお子さんを持つ別のパートさんは、「でも」と話す。


「高校生くらいで一度ちゃんと反抗期迎えておかないと。知恵と生活力付けた頃に急に暴れ出されたら、手ぇ付けられないわよ」


まるで、みんなでこれからの私の子育てについて議論しているみたいで可笑しくて、そんな時私は聞き役に徹する。

これからも真面目を貫きますと宣言しても、これからはちょっと遊んでみますとおどけても、結局誰かが文句を言いそうだった。

つまり高校生の『正しいあり方』に、答えなんかないのかも知れない。

それでも、自分は少なくともパートさんたちが『この子はどうしようもない』と見放すような駄目な人間ではないのだと。
その輪の中にいると、不思議と安心できた。


信頼は目に見えないものだと、だから貰っている方は気付かないものなのだと誰かが言っていた。
事実私は全く見えていなかったし、気付いてもいなかったけれど。

その輪の中には確かにそれがあるように、感じられたから。


「それにしても、富岡は先生方も随分熱心ね?」

「え?」

「だって毎日なんでしょう、補講。公立高校よね。お給料どうなってるのかしら」


あ……先生もお給料をもらう『職業』なんだと、意識したことすらなかった。
当たり前にそこにいて、教えてくれる人だと。


誰かが「下世話!」と突っ込みを入れれば、即座に笑いが広がった。