琥珀の記憶 雨の痛み

「ねえ……来てよね? 聞いたでしょ? ユウくんのお祝い、兼ねてるんだからね」

「後付の口実だろそんなの。行かねえよ」

「嘘だ。絶対来てくれるもん、ユウくん」


だって。
だから今日のお昼だって、あの席に、いてくれたんでしょ。

どこかにそんな、確信があったのに。


「――お前、どんだけ甘えてんの」


……甘えすぎ。
そんなことを、生まれて初めて言われた気がした。


人を頼ったり甘えたりするのが、苦手な方だと自分では思っていた。
事実、もう少し甘えていいのにとか言われることもある。

そうしたいと思ってもなかなか出来ないのは、幼い頃から染み付いた習性みたいなものだった……はずだった。


言われてずしりと来たのは、事実だからだ。
よりにもよって、この人に。
甘えてたんだ、私は。


呆れて突き放すように冷たく言い捨てられて、気付かされて。
途端に恥ずかしくなった。

赤く、ではなく、青ざめていくのが、自分でも分かった。


言葉を失って俯いた私に、意味不明の呪文が降ってきたのはその時だ。


「13番だ、覚えとけ」

「……え、なに」

「ワンカートン」


こっちを見ないユウくんの視線の先にあるのは、レジ横の煙草が並ぶケースだった。
13番は、彼が吸っている銘柄。

さっきも言ってた、煙草ワンカートンって。
なんのことだかさっぱり分からなかったけど、要するに何かの代償として、それを寄越せということなんだろうか。


――って、それってやっぱり、来てくれるってことなんじゃ……。


「買えないもん、未成年だから」

「阿呆か、ここにあるのに買えねえわけねえだろ」


突き放されたばかりなのに、もういつも通りの悪態だった。
分かりづらいを通り越して、分からない。


その後すぐに有希さんが休憩から戻ってきて、何を考えているのか分からないまんま、ユウくんはレジから抜けて行った。