琥珀の記憶 雨の痛み

驚いたのは言うまでもない。

休憩中にアツシと話したばかりで、戻ってきたらあの混雑ぶりで、ユウくんだってすぐにレジ応援に入ったのに。
一体、いつの間にその話を聞いたのか。


考えてみたらさっきだって、彼がいなくなった後の社食での会話の内容を知っていて驚かされた。
この人、どんだけ地獄耳なの?
それとも千里眼でも持っているのか。


「何驚いてんだ。即行で携帯に入ったぞ、アツシから」

「あ、なんだ……そういうことか」


じゃあお昼の会話の内容も、誰かから聞いたのか。

……って、誰。
まさか彩乃ちゃんじゃ有り得ないし、タケが言ったとは考えたくない。
うん、考えるのはよそう。

きっとあの近くの席に、ユウくんに情報を漏らす青果の誰かとかがいたんだ。


「アツシ、もうみんなに声かけてくれてるんだ。さすが」

「何が『さすが』だ、馬鹿か」

楽しいことを考えようとしたのに、ユウくんはばっさりと斬り捨ててため息を吐いた。


「飯食うだけで居たたまれない顔してたクセに、何楽しみにしてんだ。ホンット頭悪ぃなお前は」

「ひどい、言い過ぎ」

「事実だろ」

「楽しんでたクセに」

「違う、うぜーって言っただろ」


……分かりづら。
口が悪すぎて。
言葉が汚すぎて。

でも、心配してくれてるのは分かった。
だって私の『居たたまれない』顔に、気付いていてくれたのだから。


いや、本当にウザすぎて、さっさとどうにかしてほしいと迷惑がっているだけかもしれないけど。

そうだ、『終わらせてやる』とかさっき言っていた。
つまり、面倒だから、ウザいから、さっさと終わりにしろって言いたいのかもしれない。


「そういうのじゃなくて――」

は? と、ユウくんは苛立ちを隠さずに聞き返す。

「友達として。みんなで仲良く楽しくやれたら、それが一番じゃない」


それで、もし本当に、苦しいよりも楽しめたら。
そしたら――、ちゃんと『友達』の距離を、取り戻せるかもしれない。


ユウくんはもう一度、「馬っ鹿じゃねえの」と悪態を吐いた。


ユウくんの望み通り、『終わり』になるかもしれないのに。
本当に怒っているみたいだった。