琥珀の記憶 雨の痛み

ケイがバイトを辞めた後、携帯が通じなくなっている。
その事実を私は、アツシの口から聞かされた。

彼も最初はそれをメグから聞いたらしい。


その場で私も自分の携帯で確認して、呆然とした。
電話もメールも、SNSの類も全部、ケイとの連絡手段は閉ざされていた。


「変な辞め方した後だったし、心配はしてたんだけど……。ケイが通ってるのは学区外の私立だろ。愛実も俺も、他に知り合いもいなくて確かめようがなかったから」


だから、気にはしていたけれどそれ以上何も出来なかった、と。
アツシは、ケイとの連絡が途絶えたことを知っていながら何もせずにいたことを申し訳なさそうに言った。


申し訳ないのは私の方だ。
少なくとも中学の頃、ケイと一番仲良かったのは自分だと思ってたのに。

携帯が繋がらなくなったことすら、気付いてなかったなんて。
薄情、どころの騒ぎじゃない。


「ケイの家、までは、行ってないんだよね?」


アツシやメグがどこまでしたのかを、念のために確認する。
また「ごめん」とすまなそうな返事が来て、責めてるわけじゃない、と慌てて顔を上げさせた。


「教えてくれてありがと。私、直接ケイの家当たってみるよ」

家の場所は分かってるし、卒業アルバムか何かに名簿があったあずだから、探せば家の電話番号も分かるはずだ。


「休憩終わりだ、行かなきゃ」

「あー……莉緒ちゃん。さっきの計画、ケイのことはっきりしてからにする?」


席を立った私を呼びとめたアツシは、計画を練っていたさっきまでとは打って変わって意気消沈している。
『楽しみ』と『気がかり』の狭間で、彼も揺れてるようだった。


「ううん、せっかくここまで考えたんだし、それはそれで進めよう? 私も、何とかその前にケイと連絡取れるようにしてみるから」

「……じゃ、そっちは任せるよ」


そうは言ったものの、休憩室を出る時も、アツシはまだ心配そうな顔をしていた。