琥珀の記憶 雨の痛み

2人のこと、兄妹みたいって言いました?
そう聞く前に、答えは先に有希さんの口から出てきた。


「なんかさあの2人、超ブラコンな妹とシスコンな兄貴みたいで笑える」

「……やっぱり、有希さんでしたか」

苦笑しながらそう言うと、「えー何が!?」ときょとんとしてる。


社食でのやり取りを話してタケが微妙な顔していたことを教えると、それでも彼女は、

「そうは言っても、あれはカップルには見えないでしょ」

ときっぱりと断言した。


そうなのかな。
私には、仲良さ気な雰囲気がビシビシ伝わって来るけど。
独特の、2人だけの空気が。

例えば彼がナツと2人で帰る背中を見送った時だって、そういう雰囲気は感じなかったのに。


『先輩』

あの、彼女だけに許されたみたいな特別な呼び方がそう感じさせてるんだろうか。


私には、あの2人が兄妹なんかには、全然見えない。


「だってあの少年は――、なんつったっけ? あの子」

「タケです、竹内くん」

「そうそう、竹内少年はさー……ま、いっかどうでも」

「え! なんですか、言ってくださいよ」


言いかけの気になるところで止めてしまった有希さんは、何が面白いのかしばらく笑いを噛み殺していた。

けど、ちょうどすぐにお客様の波が来て、結局私は続きを聞きそびれてしまった。


それにしても――『竹内少年』って。
それはある意味、有希さんだけの『特別』な呼び方だ。

けどやっぱり、彩乃ちゃんの『先輩』ほどの破壊力を持って私の心を攻撃することはなかった。