琥珀の記憶 雨の痛み

「まー、連日飲み会なのはホントだけどさ。私、レジ開けよりレジ締めの方が好きなんだよねー」

キャッシャー台のテンキーの溝を綿棒で拭きながら、有希さんは午後シフトを好む理由をひとつ追加した。


「お金がさー、まあ特に小銭が増えるからなんだけど、現金袋が重くなるじゃない? あれがいいよねー」

「……有希さんのお金じゃありませんよ?」

また、さっきと似たような突っ込みを入れてしまった。
有希さんはポカンとしてから笑う。


「違う違う。なんか重たい現金袋運んでる時さ、あー今日はこれだけ働いたーって実感しない?」


……あ。

今度は、ポカンとしたのは私の方だった。


仕事の、やりがいの感じ方って人それぞれだ。
最後の最後に重たい現金袋を持って金庫室とレジを何往復もする行為には、私はそれを感じたことはなかったけど。

なるほど、と思う。
そういう感じ方もあるんだ。


「有希さん、私今日のレジ締め、ちょっと楽しみになってきました」

「あははー! 莉緒ちゃんの担当レジ、両替して小銭いっぱいにしといてあげる」

「や、それはいりませんから」

嫌がらせの様なふざけた申し出をピシッと断ると、また有希さんはケラケラと楽しそうに笑っていた。


ぽつぽつと現れるお客様の合間、また内職の手を動かしながら、ふと思い立って聞いてみる。

「有希さん、加食の高校生とよく話すんですか?」

タケのことだ。

彼が名前は知らないと言ってたから、有希さんも名前で聞いても分からないかもしれない。
でも、さっきタケが言ってた『大学生』は多分彼女のことだと思う。


「誰? あー、莉緒ちゃんのグループの? 最近小日向とよく一緒にいる彼か」