琥珀の記憶 雨の痛み

気持ちを切り替えてしまえば、ヘマもなく上手く仕事に入れた。


ユウくんが最後に『ちゃんと仕事しろ』と一言忠告をしていったのは、正社員の階段を上った彼なりの仕事意識かもしれない。
悔しいけど、それに押されたのも事実だ。


昼下がりの小さな波が引いた後、午後シフトで出勤してきた有希さんと同じレジに入った。


有希さんも大学が夏期休暇に入ってるはずだけど、午前中シフトには滅多に入らない。
彩乃ちゃん始め学生バイト数名が連休中を午前シフトに切り替えた分、普段よりも出勤日数は増えていた。

自然、最近顔を合わせる機会は多かったのだけど、2人制はパートさんか社員さんとバイトで組まされることが多いので、同じレジに入るのは久しぶりだった。


客足が引いている時間帯に2人制だと、口はどうしてもおしゃべりに傾く。

手はビニール袋を取りやすく広げる内職に、目は売り場の通路の様子に向きながら。
当然有希さんの方も、レジ周り清掃の内職に手を動かしながらだけど。


「有希さんは夏休み中も時間帯あんまり変わりませんねー?」

聞いてみると、

「だって夏休みだよー? 毎日朝まで飲んでるもん、午前中なんてムリムリ」

と笑い飛ばされる。

「大学生なんてそんなもんよ。お金払って、大卒の肩書きと人生で一番遊べる自由な時間を買うのよ」

人生の先輩からの、ありがたーい教え。
……みたいなドヤ顔で、有希さんはそう言った。


「また。お金払ってるの、有希さんじゃないでしょ」

思わず突っ込むと、悪びれもせずに「バレたか」と舌を出した。

この人のこういう飾らない感じは、憎めないし、むしろ好きだ。


「そっか、お酒飲めるんだ大学生は」

「そうよ、法的にマル。高校生でも飲んでるヤツは飲んでるけどねー」

「……そこは、ノーコメントで」


法的に、は、お酒でも煙草でも同じことで。
高校生バイトの中に喫煙者が多いことは、多分有希さんも分かってて言ってる。

友達がしているその行為自体を口に出して否定も肯定もしたくないから、苦笑いで流すしかない。

そんな私の心情が分かってるみたいに、人生の先輩はニヤニヤ笑っていた。