掴まれた手をぐいっと引くと、甘い拘束は簡単に解かれた。
ホッとしているはずなのに、それを淋しいと思っている自分もいる。
――ここで、迷っちゃいけない。
突き放すように彼の胸を押すと、尚吾くんはされるままに一歩後ろに下がった。
「だよね……。ごめん」
そう、淋しそうに笑って。
ずきんと胸が痛んだ。
今私は何を守ろうとして――、何を、壊した?
「もうすぐそこだから、1人で帰れるよね」
言いながら彼は、メットを出して被る。
そのまま原付を起こして跨った。
ここでバイバイなんだ。
いつもマンションのエントランスまで送ってくれていたのに。
ううん、私が突き放したんだ。
だから、これでいい。
「尚吾、くん」
「うん」
何で呼んでしまったのか、分からない。
でも彼はにこりと笑って、少し身体を倒して私の顔を覗きこみ、「よし」と呟いた。
「もう泣いてないね」
――私の心配なんか、しないでよ。
もう一度こみ上げそうになるものは、何とか押しとどめた。
原付のエンジンがかかる。
さよならだ。
私が自分で決めた、ことだ。
いなくなる彼の背中くらいは、見送らなきゃいけないのに。
遠ざかっていく尚吾くんを見たくなくて俯いたまま拳を握りしめた私に、
「莉緒」
――最後に彼が、呼びかけた。
ホッとしているはずなのに、それを淋しいと思っている自分もいる。
――ここで、迷っちゃいけない。
突き放すように彼の胸を押すと、尚吾くんはされるままに一歩後ろに下がった。
「だよね……。ごめん」
そう、淋しそうに笑って。
ずきんと胸が痛んだ。
今私は何を守ろうとして――、何を、壊した?
「もうすぐそこだから、1人で帰れるよね」
言いながら彼は、メットを出して被る。
そのまま原付を起こして跨った。
ここでバイバイなんだ。
いつもマンションのエントランスまで送ってくれていたのに。
ううん、私が突き放したんだ。
だから、これでいい。
「尚吾、くん」
「うん」
何で呼んでしまったのか、分からない。
でも彼はにこりと笑って、少し身体を倒して私の顔を覗きこみ、「よし」と呟いた。
「もう泣いてないね」
――私の心配なんか、しないでよ。
もう一度こみ上げそうになるものは、何とか押しとどめた。
原付のエンジンがかかる。
さよならだ。
私が自分で決めた、ことだ。
いなくなる彼の背中くらいは、見送らなきゃいけないのに。
遠ざかっていく尚吾くんを見たくなくて俯いたまま拳を握りしめた私に、
「莉緒」
――最後に彼が、呼びかけた。



