琥珀の記憶 雨の痛み

「アツシの彼女はメグだよ」

「……!」


気付かれないくらい小声での呼びかけとアイコンタクト、だったのに、突然横からかかった声に、私も彩乃ちゃんもちょっとだけ飛び跳ねた。

にこりと笑いかけてきたのは、ナツ。
瞬間、どくんと心臓が跳ねた。


もし。
――もしここで、ナツが。

さっき私が彩乃ちゃんに釘を刺したみたいに先手を打ったら……?


『でね、私が今狙ってるのはぁ。あっち、タケの方!』


なんて、そんなセリフが、勝手に頭の中に響く。
想像だけが先行して話が進んで行く。


『だから、タケには手ぇ出さないでねぇ』


ナツはそんな風には言わない、絶対。
でも先に尚吾くんへの好意をバラしてしまえば、牽制は出来る。

そして私は、今以上に身動きが取れなくなる。


『だから、協力してね?』


逃げ場すら、失う……。


「――なんですか?」

「そうそう、つい最近なんだよぉ。先月くらいかな? だからぁ、今は2人、超ラブラブでぇー。ねえ莉緒?」

「あ、えっ!? あ、うん、そうそう!」


焦った!
トリップしてた、かも。

現実にはナツは、そんな牽制は入れなかった――多分、私がその瞬間トリップしてたんじゃなければ、だけど。