琥珀の記憶 雨の痛み

――……ん?
はにかんだような言い方に、ちょっとだけ引っ掛かりを覚えた。

まさか、とは思うが。


「彩乃ちゃん……念のため先に言っとくけど、アツシは惣菜コーナーの子と付き合ってるよ?」

一応そう言ってやんわりと釘を刺すと、彼女は目を丸くして顔を真っ赤に染めた。

「や、やだ莉緒さん! そういうんじゃないですよ!」


仕事用のふたつ結びのおさげをほどいた彩乃ちゃんは、赤い顔を髪の毛で隠すようにして俯いた。

どうやら本当に考えすぎだったみたいで、私の的外れな発言にただ照れているだけに見える。


『めんどくさいよねぇ、男女のグループ内での色恋沙汰って』

いつだったか有希さんにそう言われたのも、この場所だった。


正直今は自分のことだけでもいっぱいいっぱいなのに、その上彩乃ちゃんがアツシに横恋慕――なんて事態でも起こりようものなら。
……考えただけで鳥肌モノだ。
パンクしそう。


アツシのこと好きになっちゃったの?
そう直接口にしたわけでもないのに、ちょっと色恋を匂わせることを言っただけでこの照れ様を見せる彩乃ちゃんだ。

この様子ならおかしなことにはなるまいと、内心ホッとした。


「着替え終わった? 下、降りようか」


彩乃ちゃんは、未だに気まずそうに俯いたままおずおずと後を着いてくる。

下手なこと言ったから逆に変な風に意識させちゃったようで、申し訳なくて苦笑が漏れた。