琥珀の記憶 雨の痛み

タイミング良く売り場で紹介出来たのはアツシだけだったけど、彩乃ちゃんが短時間で随分打ち解けた様子なのは相手が彼だったからだと思う。

ユウくんだったらそうはいくまい、と考えると、魚のレクチャーを除いても、あそこでアツシに会えたのはラッキーだった。

レジに戻ってから彩乃ちゃんの接客態度に出るおどおどが少し消えた気がするのすら、アツシの影響に思えてしまう。

村上さんが『レジの外に出るのも重要』と言った意味は、もしかしたらこういうところにもあるのかも知れなかった。


「莉緒さん、あの……」


彩乃ちゃんが言い出したのは、仕事が終わった後の更衣室だった。


「今日、下までご一緒していいですか? アツシさんがさっき、他の仲間も紹介するから帰りに莉緒さんと一緒に降りて来いって」

「あ、うん。もちろん!」


……言われるまで気付かなかった。
彩乃ちゃんがバイトを始めてから、もう1週間以上経ってるのに。


「ごめん、気が利かなくて。もっと早く紹介しておくべきだったよね」


私が入店した時にはケイとナツとメグがいて、私は自然にあの中に引きこんでもらえたけど。

彩乃ちゃんは他の部門に友達がいるわけでもなく、1人で入ってきた。
レジの、というよりも高校生バイトの先輩として、ケイたちがしてくれたことを私がやらなきゃいけなかったんだ。


職場で顔を合わせた時に引き合わせれば良いと思ってた。
仕事の一環として。

同じ高校生バイト仲間としての彼女の友人関係については、全く配慮出来てなかった。
働きやすさって、そういうところからも生まれるのに。


「ごめーん。私、先輩失格だぁ」


まさかアツシがそういう気遣いをする人だったなんて。
や、彼の場合は気さくなお調子者の延長なのかもしれないけど。