琥珀の記憶 雨の痛み

「ケイを……あ、その、辞めてしまった高校生を。彼女の背中を、見て来たからで……。いなくなって初めて、どれだけ甘えてたか気付いて。いつまでも新人気分で……だから、その、最近頑張ってるっていうよりも。自覚を持つのが遅すぎたって言うか……」


思いを、口にするのは難しい。
しどろもどろでちゃんと話せなくて、うまく伝わっているのか分からなかった。

けれど村上さんは、うんうんと頷きながら話を聞いてくれた。


ケイがしたのは、組織として見れば、学生バイト全体の信用を揺るがすような辞め方だったのかもしれない。

けど、村上さんやケイを間近で見ていたレジ社員さんたちが、彼女個人を非難しているわけではないのだと。
その表情を見ていたら、なんとなく伝わってきた。


「新田さんは、バイトここが初めてなんだって? 会社組織ってね、そういうもの。誰かがいなくなってもそれだけで崩れちゃいけないし、残った誰かや新しい誰かが代わりに支えていくようにちゃんと出来てる」


けどね、と、村上さんはそこで一旦言葉を区切った。

転勤でもうすぐここからいなくなるらしい彼は、どういう気持ちでこの言葉を言っているのだろう。

どこか遠い目をしながら穏やかに綴られる言葉に、私も真摯に耳を傾けた。


「それは誰でも代わりが利くってことではなくて――誰かがそこに『いた』ことの意味は残るよね。新田さんみたいに、そうやって。いなくなった誰かの軌跡は、ちゃんと引き継がれていくんだから」


頑張って、と、ぽんと背中を押される。
ちょうどレクチャーが終わったらしいアツシと彩乃ちゃんが、こちらを振り返ったタイミングだ。

ちゃんとお礼を言う暇もなく仕事に戻っていった村上さんの背中を、もらった言葉を噛みしめながら見送った。