琥珀の記憶 雨の痛み

「学生さん、1人急に辞めちゃったでしょ。結構信用のある子だったから余計、社員の間でもショックがデカくてさー」


オフレコだよ? と声を落としながら、村上さんは話す。


「今回新しいバイト採るのに、高校生はどうかって議論も実はあったらしい。そこに、『新田さんは頑張ってる、高校生ひとくくりにすべきじゃない』って。つまり彼女が雇われたのは、君の功績でもあるわけだ」


――庇ってくれたのは、きっと岡本さんなのだろう。
褒められているようだけど、複雑だった。


ケイが簡単に責任を放り出すわけがない。
何かどうしようもない事態があったはずなのだ。

岡本さんもそれをよく分かっていて、ケイがバイトを休み始めた頃ひどく心配していた。
レジスタッフに、彼女が突然辞めたことを表立って悪く言う人はいない。

ケイは周りから、それだけの信用を得ていた。


なのにそれでも、ああいう辞め方をすれば、見えないところでは余波が起こっていた。
それが大人の社会なのだと、お金をもらって仕事をする者の責任なのだと、現実を突き付けられた気がした。


彼女に何かが起こっているだろうことは安易に想像が付くのに、私は未だに事情を聞きにも行っていない。
狼狽えてばかりで、心配はすれども行動には移していない。

そんな私が褒められて、ケイが最後にしたことだけが、悪い印象としていつまでも残るのだろうか……。


「私が頑張れるのは――、」


顔を上げると村上さんは、優しい穏やかな顔で小さく頷いて先を促した。