「最初は突然1人にされて焦りましたけど。いつもすぐに戻ってきて問題解決してくれるから、莉緒さんってスーパーマンみたいだと思ってました」


その例えが可笑しくて、思わず吹き出した。


「別に特別なことじゃないよ、みんなそうしてる。今は2人制だからキャッシャー側に入ってる私が売り場に行くけど、1人制になったら自分で行くしかないの」

「うわぁ。だから、ですね」

「何が?」

「レジ担当なんてずっとレジの中にいるのに、なんで売り場の配置とか覚えなきゃいけないんだろうって疑問だったんです」


自分の中の疑問が解決したからだろう、彼女はすっきりしたような顔でまた色々とメモを取り始めた。


随分率直な言い方だな、と思う。
オブラートをさらになくせば、『なんでそんなこと覚えなきゃいけないんだ』『それは自分の仕事じゃない』という思いがあったのだろう。


そういう気でいたら、覚えるのが遅いのは当然だった。
彼女がその気持ちをどう消化したのかは分からないけれど、きっとこれからは速くなる。


彼女の今までの気持ちも、分からなくはない。

アジにはアジの、サバにはサバの、惣菜バイキングだってそれぞれの品物の。
バーコードを付けるべきは売り場担当で、レジ担当はそれをスキャンするだけにすべきなのにと――最初は私も、そう思っていたのだから。