琥珀の記憶 雨の痛み

19時頃には客足が引き始め、遅番のパートさんも次々あがっていく。

閉店までは社員さんと学生バイトで少ないレジをまわし、15台あるレジは順番に閉じていく。

締めたレジのお金とジャーナルをセットにして金庫に提出しにいくのが、この時間の私の仕事だ。

人手も客足も減った時間帯に、まだ1人でレジをまわせない私は他の作業をさせられるというわけ。


万が一の時のため、1回の運搬につきレジ1台分しか現金を持たない決まりだから、レジと金庫を何度も往復する。

入金用バッグに入った小銭が意外と重くて、この往復は地味に重労働だ。


そして腹立たしいことに、

「あー、もうそんな時間」

「……お疲れ様です」

レジからバックヤードへのルートが、青果コーナーを通っている。


「毎日毎日何往復も。ごくろーさん」


それは、半人前でレジに入らせてもらえない私への皮肉、なのか。

にやりと口角を上げたその人に、言い返す言葉は浮かばない。


「……急ぐので」


現金の運搬ルートは変更不可、寄り道もしてはいけない。

社内ルールだ。