名倉祐仁。
私たちの代で、この地区で中学バスケをしていた者で、当時の彼を知らない人はいないんじゃないだろうか。
長身を活かしたゴール下のプレイヤーだった彼は、ダイナミックなパワープレイと繊細なトリックプレイを兼ね揃えた、中学レベルを超越した選手だった。
自信に溢れていて、相手が強ければ強いほど不敵に笑い、飄々と敵を翻弄してゴールを奪う――その姿は今でも鮮明に脳裏に焼き付いている。
プレイだけでなく整った容姿や活き活きとした表情に惹かれた彼のファンは、学校内外にも多かったはずだ。
大会ではいつも黄色い歓声が上がっていたし、事実私ですら、他校で学年も違う彼の存在がこれだけ鮮烈に印象に残っている。
頬骨にふたつ並んだほくろがトレードマークだった。
それだけが変わらず、今私の目の前にある。
なんで今まで気付かなかったのだろう、こんなに近くにいながら。
だって印象が、違いすぎる。
名倉祐仁は快活な人だと勝手に思っていたのに、いつも地べたに足を放り投げて煙草をふかすユウくんの印象は無気力で、周囲の何にも興味なさそうに見えていた。
そのクセ私に対して言うことはいやに攻撃的で、だから怖くて、苦手意識があって。
中学の時の彼に対するイメージは遠くから見ていて勝手に作り上げた私の偶像だから、それが間違っていただけなのか、それとも彼が変わったのかは……分からないけど。
だけど彼――名倉祐仁は、その実力を買われてバスケの名門私立高校にスポーツ推薦入学したはずだった。
バスケの世界で言えば所謂エリート組で。
今でもそこでバスケをしているべき人なのに。
――『そんな理由で辞めたんだとしたら、あんたこそ最低だと思うけど』
彼にはきっと。
辞めざるを得ない事情が、あったんだ。
そんな彼からしたら、確かに私がバスケを辞めた理由は『最低』なのかもしれない。
初めて少しだけ、バスケを辞めたことを後悔した。
私たちの代で、この地区で中学バスケをしていた者で、当時の彼を知らない人はいないんじゃないだろうか。
長身を活かしたゴール下のプレイヤーだった彼は、ダイナミックなパワープレイと繊細なトリックプレイを兼ね揃えた、中学レベルを超越した選手だった。
自信に溢れていて、相手が強ければ強いほど不敵に笑い、飄々と敵を翻弄してゴールを奪う――その姿は今でも鮮明に脳裏に焼き付いている。
プレイだけでなく整った容姿や活き活きとした表情に惹かれた彼のファンは、学校内外にも多かったはずだ。
大会ではいつも黄色い歓声が上がっていたし、事実私ですら、他校で学年も違う彼の存在がこれだけ鮮烈に印象に残っている。
頬骨にふたつ並んだほくろがトレードマークだった。
それだけが変わらず、今私の目の前にある。
なんで今まで気付かなかったのだろう、こんなに近くにいながら。
だって印象が、違いすぎる。
名倉祐仁は快活な人だと勝手に思っていたのに、いつも地べたに足を放り投げて煙草をふかすユウくんの印象は無気力で、周囲の何にも興味なさそうに見えていた。
そのクセ私に対して言うことはいやに攻撃的で、だから怖くて、苦手意識があって。
中学の時の彼に対するイメージは遠くから見ていて勝手に作り上げた私の偶像だから、それが間違っていただけなのか、それとも彼が変わったのかは……分からないけど。
だけど彼――名倉祐仁は、その実力を買われてバスケの名門私立高校にスポーツ推薦入学したはずだった。
バスケの世界で言えば所謂エリート組で。
今でもそこでバスケをしているべき人なのに。
――『そんな理由で辞めたんだとしたら、あんたこそ最低だと思うけど』
彼にはきっと。
辞めざるを得ない事情が、あったんだ。
そんな彼からしたら、確かに私がバスケを辞めた理由は『最低』なのかもしれない。
初めて少しだけ、バスケを辞めたことを後悔した。



