絆創膏を貼って傷が見えなくなったからか、ユウくんの強張った顔も多少は和らいだ。
脱力したのか、また元の定位置に、崩れ落ちるように座り込む。
すぐに傘に入れたけど、最早手遅れというか無意味というか。
文字通り水も滴っている。
イイ男、かどうかは置いといて。
「名倉ぁ。またお前、傘差さないで。家近いんだから、こんな日くらいさっさと帰れ。お前のせいで新田さん帰れないんだろ、可哀相に怪我までさせて」
青果コーナーの社員さんだったから、気遣って声をかけてくれるけど。
「あ、いや別に。彼のせいで怪我したわけじゃ……」
どっちかというとさっきから、迷惑がられているのは私の方だ。
横目でユウくんを気にしながら、社員さんの言葉をごにょごにょと否定する。
「新田さん、名倉に付き合うことないよー風邪ひいちゃうよ? それにそろそろ帰らないと、親御さん心配するんじゃない?」
社員さんはそれだけ言って、必要以上に構うことはなく帰っていく。
うっかりしていた『門限』のことを、しっかりと私に思い出させて。
名倉――普段はあまり耳にすることのないユウくんの苗字を連呼されて、何かが引っかかっていた。
色々話途中だし、気になることも沢山あるし、さらにもう帰らないとまずい時間だと気が付いた焦りで頭の中が混乱する。
名倉、ユウ……いや、知らないんだけど。
彼のフルネームを聞く機会なんて、バイト始めてから一度もなかったし。
知るワケないんだけど。
なのに、名倉のワードにここまで引っかかるのは……
「あんた、ソレ石付いてたろ。無くした? 金具外しとけよ」
思考が、中断される。
石――琥珀のこと。
まただ。この人、意外と良く見てる。
「無くしたんじゃなくて……外したの。重くて」
重くて。
重量、ではなく、その存在が。
そこを濁したら、ユウくんはぷっと小さく吹き出した。
別に笑うとこじゃない、と思ったけど、
「金具ごと外せよ!」
――突っ込まれてみれば、ごもっともだった。
脱力したのか、また元の定位置に、崩れ落ちるように座り込む。
すぐに傘に入れたけど、最早手遅れというか無意味というか。
文字通り水も滴っている。
イイ男、かどうかは置いといて。
「名倉ぁ。またお前、傘差さないで。家近いんだから、こんな日くらいさっさと帰れ。お前のせいで新田さん帰れないんだろ、可哀相に怪我までさせて」
青果コーナーの社員さんだったから、気遣って声をかけてくれるけど。
「あ、いや別に。彼のせいで怪我したわけじゃ……」
どっちかというとさっきから、迷惑がられているのは私の方だ。
横目でユウくんを気にしながら、社員さんの言葉をごにょごにょと否定する。
「新田さん、名倉に付き合うことないよー風邪ひいちゃうよ? それにそろそろ帰らないと、親御さん心配するんじゃない?」
社員さんはそれだけ言って、必要以上に構うことはなく帰っていく。
うっかりしていた『門限』のことを、しっかりと私に思い出させて。
名倉――普段はあまり耳にすることのないユウくんの苗字を連呼されて、何かが引っかかっていた。
色々話途中だし、気になることも沢山あるし、さらにもう帰らないとまずい時間だと気が付いた焦りで頭の中が混乱する。
名倉、ユウ……いや、知らないんだけど。
彼のフルネームを聞く機会なんて、バイト始めてから一度もなかったし。
知るワケないんだけど。
なのに、名倉のワードにここまで引っかかるのは……
「あんた、ソレ石付いてたろ。無くした? 金具外しとけよ」
思考が、中断される。
石――琥珀のこと。
まただ。この人、意外と良く見てる。
「無くしたんじゃなくて……外したの。重くて」
重くて。
重量、ではなく、その存在が。
そこを濁したら、ユウくんはぷっと小さく吹き出した。
別に笑うとこじゃない、と思ったけど、
「金具ごと外せよ!」
――突っ込まれてみれば、ごもっともだった。



