琥珀の記憶 雨の痛み

「嘘でしょ……」

無意識に零れ落ちた呟きに、ユウくんは「は?」と怪訝な顔をする。

「誰も気付かなかったのに」


この人は私のことなんか、そんなに良く見てないと思ってた。
誰かに気付いてもらえたことよりも、唯一気付いたのが彼だということが意外すぎる。


「バスケ、結構本気でやってたんじゃねえの。なんで辞めた?」

「え?」


唐突な問いかけに、間抜けな声が漏れた。
このタイミングで、なんで今いきなり部活の話――……


「いい筋肉付いてるじゃん」

「――ッ! 最っ低!! 気にしてるのに!!」


理解。
唐突じゃなかった、繋がってた。
スカートが短くなったことと、コンプレックスの足が。

思えばこの人はいつもここに座ってる。
下からの視線だと、自分で思っているよりも見えるのかもしれない……隠したい部分が。


全力で睨みを利かせると、ユウくんは心外そうに眉を寄せた。

「なんだその顔、褒めたのに」

「全然嬉しくない、女子だもん。筋肉ムキムキの競輪選手みたいな太腿なんかよりすらっと華奢な足の方が良いに決まってるでしょ」


今のはユウくんが悪い。
デリカシーなさすぎ。
絶対謝らせたい!
当然の反論をしたつもりだった。
私に非はない、一方的に向こうが悪い。

なのに。
射抜くような鋭い眼光を向けられて、動けなくなったのは私の方だ。


「そんな理由で辞めたんだとしたら、あんたこそ最低だと思うけど」

「な……」


真正面から思わぬ切り口で非難されて、動揺はした、当然。
けど言葉が出なかったのはそのせいじゃない。

彼の声の低さが、冷たさが、トーンが、言い方が――纏う空気が。
本気で私を否定したのを、感じたからだ。