琥珀の記憶 雨の痛み

「……まだここに、いるの?」

それなりの覚悟をした上で尋ねたのだけど、声に出さずとも聞こえる『はぁ?』がこもった視線には思わず身体がびくつく。

「あんたこそ、あいつら待ってるみたいだけど」

と、ユウくんは面倒くさそうな溜め息と一緒に煙を吐き出した。


「あの、さ」

「……んだよ」

ことごとく嫌そうな返事に心が折れそうになる。
でも、思い切った。

「もうちょっとだけ、いてあげる。それ以上濡れたら風邪ひいちゃうし」


上から目線だ、これこそ。
間違いなく。
多分、ユウくんの嫌いな。

本当は何のためにそうしたいのか――これはユウくんへの苦手意識を取り払うための一歩前進なのか、尚吾くんとナツの間から逃げただけの後退なのか。
自分でも分からない、ごっちゃになる。


怒らせて、当然追い払われるかと思ってた。
だけどユウくんは見透かしたように鼻で嗤って、低く小さな声で「好きにすれば」と呟いた。


「莉緒どーしたの? 話し込んでた? この雨だしうちら移動するけど」


いつまで経っても動かないから痺れを切らしたのか、いつの間にかすぐそこに来ていたメグがそう言った。
酷い雨で2人共傘を持っているのに、アツシと腕組んで相合傘で。

その後ろにいる尚吾くんとナツは別々に傘を差してて、それを見て少しだけホッとする。


『この雨、どうせ傘差してても濡れるしさぁ』
『一緒にこっち入れば』

――ナツと2人になったらどうするか、分からないけど。


「ごめんね待たせてたのに! 私、もうちょっとここにいる」

言うと、「え」と尚吾くんが顔をしかめた。

「莉緒、時間平気なの? 待ってるよ、送ってくし」


……それじゃ意味、ないんだけどな。
ナツの顔が、怖くて見れない。
どうしよう、と思っていたところに、その低い声が、はっきりと響いた。


「タケ悪い、今日は先帰って。俺が話あんの、こいつと」