涙を乱暴に拭って、気持ちがまとまらないまま、1階へ急いだ。
泣いた形跡は、どうせ雨が隠してくれる。
従業員出入り口の正面が守衛室で、出入りする人は従業員も業者も全員、ここでIDのチェックを受ける。
出入り口左右や壁をぐるりと囲むように並んだ傘立てと、店舗側の壁には正社員さん全員分のタイムカードも。
人の出入りが多い時間帯にはかなり混雑するそこは、お客様の目があるわけでもなく煩雑としていて、大したスペースはない。
その大して広くもない従業員出入り口の内側、傘立ての狭い隙間の奥で、
「お疲れ! 遅かったね、忙しかった?」
彼は、待っていた。
「ごめん、待たせて」
「莉緒? 大丈夫? 疲れた?」
「――莉緒?」
尚吾くんの背中からぴょこんと、ナツが顔を覗かせた。
つきんとまた、痛みが走る。
ナツの『莉緒』は私を呼んだんじゃなくて、尚吾くんの『莉緒』を復唱したニュアンスに聞こえた。
思えばまだ2人の時にしか、名前では呼び合ったことがない。
『いつから呼び方変わったの?』
そう責められているような気になるのは、被害妄想なのかな。
「莉緒?」
と、二度目のナツの呼びかけはいつも通りだ。
「なんかあった?」と心配されて、慌てて両手を振って否定する。
「ごめん、ちょっとボーッとしちゃった。メグたちは?」
「外にいるよぉ。雨ひどいしここで待ってようって言ったんだけど、狭いし邪魔になるからって」
「さっきまで結構人通ったしね」
「あ、だから2人共、そんな隅っこに……遅くなってごめん!」
ここ、有希さんも通過したんだよね……。
ナツのお相手が尚吾くんだって、気付いたんだろうな。
話しながら、扉を開けた。
激しい雨が叩きつけるように降っていて、外は雨に煙っていた。
泣いた形跡は、どうせ雨が隠してくれる。
従業員出入り口の正面が守衛室で、出入りする人は従業員も業者も全員、ここでIDのチェックを受ける。
出入り口左右や壁をぐるりと囲むように並んだ傘立てと、店舗側の壁には正社員さん全員分のタイムカードも。
人の出入りが多い時間帯にはかなり混雑するそこは、お客様の目があるわけでもなく煩雑としていて、大したスペースはない。
その大して広くもない従業員出入り口の内側、傘立ての狭い隙間の奥で、
「お疲れ! 遅かったね、忙しかった?」
彼は、待っていた。
「ごめん、待たせて」
「莉緒? 大丈夫? 疲れた?」
「――莉緒?」
尚吾くんの背中からぴょこんと、ナツが顔を覗かせた。
つきんとまた、痛みが走る。
ナツの『莉緒』は私を呼んだんじゃなくて、尚吾くんの『莉緒』を復唱したニュアンスに聞こえた。
思えばまだ2人の時にしか、名前では呼び合ったことがない。
『いつから呼び方変わったの?』
そう責められているような気になるのは、被害妄想なのかな。
「莉緒?」
と、二度目のナツの呼びかけはいつも通りだ。
「なんかあった?」と心配されて、慌てて両手を振って否定する。
「ごめん、ちょっとボーッとしちゃった。メグたちは?」
「外にいるよぉ。雨ひどいしここで待ってようって言ったんだけど、狭いし邪魔になるからって」
「さっきまで結構人通ったしね」
「あ、だから2人共、そんな隅っこに……遅くなってごめん!」
ここ、有希さんも通過したんだよね……。
ナツのお相手が尚吾くんだって、気付いたんだろうな。
話しながら、扉を開けた。
激しい雨が叩きつけるように降っていて、外は雨に煙っていた。



