琥珀の記憶 雨の痛み

感謝の気持ちを込めて深々と頭を下げたら、岡本さんには「大袈裟だ」とまた豪快に背中を叩かれる。
勢いをもらったその足で、更衣室まで急いだ。

レジはただでさえ他の部門よりも少し終わるのが遅いし、岡本さんにも言われた通り、結構待たせてしまっているかもしれない。


勢いよく開けた更衣室、この時間にいるのは大抵レジの遅番パートさんやバイトメンバーと、待ってくれているナツとメグくらいなのだけど。


「……れ?」

ナツとメグの姿は、そこにはなかった。
こうなると、社員さんたちがあがってくる時間帯までは更衣室は閑散としている。


「莉緒ちゃんお疲れー。遅かったね?」

「あ、お疲れ様です」


無人かと思いながら奥へ進んで行くと、私服に着替え終わった大学生バイトの有希さんがまだ残っていた。
ちょうどバッグを手にしてロッカーを閉めたところで、彼女もすぐに帰るんだろう。


気にしていたのか、「先にあがっちゃってごめんね」と声をかけてくる。

「すぐ終わったんですけど、ちょっと話し込んじゃってて」

気を遣わせないようにそう言うと、有希さんは「そっか」とほっとしたように頷いた。


「あ。莉緒ちゃんの友達の……惣菜コーナーの2人? 多分、外で待ってるよ」

「え? 外、まだ大雨じゃないですか?」

びっくりして聞き返すと、「会話丸聞こえなんだもん」と彼女は苦笑した。


「なんか、彼氏? 付き合いたてかなアレは。ちょっとでも一緒にいたいみたいで、もう片方も引きずられるようにして出てったよ」


メグのことだ。
くすくす笑いながら話す有希さんにつられて込みあげた笑いは、

「でももう1人もまんざらじゃないってゆーか……あれは、グループ内に狙ってる男がいるな」

――中途半端に凍り付いた。