琥珀の記憶 雨の痛み

私のことを何度も鼻で嗤っている彼に、私にも出来るところを見せつけてやろうって。
見せつけて、見返してやろうって――。

なのに実際は逆だった。
彼はあからさまに態度や言葉に出して鼻で嗤ったけれど、きっと私は心の奥深くで同じことをしていたんだ。


二重にショックだった。

自分に有利なはずのテリトリーですら感じた、言いようのない敗北感。
人を小馬鹿にしたようなユウくんのあの態度に嫌悪感を抱いていたはずなのに、自分だって同じことしてたこと。


別に、勝負しているわけじゃない。
頭では分かっているのに、無意識に、勝手に、いつの間にか優劣を付けようと比べている。

今までは多分、彼が言う通り、自分より下に見ていた。
それが今明確に――私の中ではっきりと、入れ替わった。


無意識だったから罪の意識などなかった。
はっきりと指摘されても気付きもせずに、酷い悪口を言われたと思っていた。


気付いてしまった今、自分の中に構築されたランキングがより鮮明に見えてしまう。
見たくない。
でもそこには、友達・家族・先輩・上司・先生――私を取り巻くあらゆる人が並んでいた。


『新田莉緒』の順位が、すごい勢いで下がっていく。
上っ面でにこにこしながら、腹の中ではこそこそと穢いことを考えている卑劣な人間の順位が。

良い子を演じている内に見失っていた、本当の自分はひどく浅ましい。
下へ、下へ――堕ちていく。