琥珀の記憶 雨の痛み

まばらながらも完全には途絶えることがなく、お客様がやってくる。

結局『あんたって』の続きを促すタイミングを逃したまま、青果の方でも閉店準備でバタつく時間が来たようで、ユウくんは持ち場に戻って行った。


――悔しいけれど、覚えが速い。


チェックした後の商品の並べ方もだんだんスムーズになってきているし、値引きや手打ちパネルの操作も頭に入ってきているようだった。

接客慣れしているのもあるのだろう。
ど初期の私みたいにおどおどした気配もなく堂々としてて、お客様に声をかける時など自然な営業スマイルが出る。
対客的に見れば研修中バッジなんかなくても全然良さそうだ。

専門のレジスタッフと比べれば処理速度は劣る、けれど、それはこれから場数と共に上がっていくだろう。
下手に急ごうとしていない分、意外なことに彼のレジ打ちには丁寧な印象があった。


乱暴で粗雑……そんなイメージがあった人だけに、間近で見せつけられたそのギャップは、なんというか。

……見直した。
そして、悔しい。


悔しい、の方が強かった。
理由に思い当たれば、またため息が漏れそうになる。
『売り場だぞ』――耳に残っていたユウくんの言葉が、それを飲み込ませた。


ここは彼ではなく私のテリトリーだから。
レジの中にいる限り、自分の方が優位だと思っていた。

あんなガサツな人のレジ打ちはきっと適当で雑で、卵割っちゃったりとかしてお客様に怒られたり……しないように、私が横からそっと教えてあげたりフォローしたり。
そういうビジョンが、きっと少なからずあった。


――『見下してんだろ、俺らのこと』


ああ。
つまりこの無意識に思い描いたビジョンすらも、そういうこと……なんだろう。