琥珀の記憶 雨の痛み

「ねえ、ひょっとしてこれから毎日?」

この狭いレジの内側に、このヒトと2人で入らないといけないわけ?
若干不安だ、いろんな意味で。

恐る恐る尋ねると、彼は素っ気なく答える。


「お前がレジ1人で入ってて、レジが空いてて、俺の仕事が暇な時だけ。社員登用の試験に通るまでだし、別にそう頻繁じゃねえよ」


――とか言いながら、昨日の今日じゃないか!


「……試験、いつなの?」

「俺の準備が整い次第」

「はっ!?」


返ってきた解釈不可能な答えに、思わず大きな声が出た。
試験って、受ける側の都合なわけ?


「とにかく急いでんだよ、俺も会社側も」

「へぇ……」


眉をしかめたユウくんが、乱暴な説明で済ませようとする。
なんで? って、聞いていいところなんだろうか。

私は相当腑に落ちない顔をしていたんだろう。
それを見て小さく舌打ちしたユウくんは、少なくとも納得したフリをして引き下がるしかない程度の説明をくれた。

つまり、青果の社員さんが1人、近く産休に入ることになったのだそうで。
新卒採用は配属が終わったばかりだし、本社側が補充人員を用意するのを待っていられないらしい。


――で。
会社が急ぐ理由は分かったのだけど、ユウくんが急ぐ理由は謎のままだ。
さっきの『俺も』は失言だったのか、教えてくれる気は……ない、らしい。


「あんたってさぁ」

「え――?」


気になる振りだけされた嫌なタイミングで、お客様が来て話は中断されてしまった。