琥珀の記憶 雨の痛み

レジ打ちは昨日の件も踏まえて私が出勤する前に三橋マネージャーや社員さんたちの間で相談したそうで、どうやら1人制の許可は私が知らない間に出されたらしい。

卒業証書授与、的なワンステップ前進の感動も特になく、今日の担当レジを割り振るタイムテーブルから既に私にも1人の時間が割り当てられていた。


夕方の混む時間帯が過ぎると、一緒にレジに入っていたパートさんがあがってそのまま自然と1人制になる。

『おめでとう』とか『しっかりね』とか上司からの一言でもあればやる気も違うのだろうけど、知らない内に起こった変化に大きな感慨もなく――また、ため息。


「売り場だぞ、辛気臭ぇな」

「えっ!?」


突然背後からかけられた声に、反射的に背筋がぴんと伸びた。

振り返って確認すると――


「ユウくん。何してんの?」

「聞いてない? あんた、俺のレジ練習の指導要員になったらしいから」


――……はッ!?
ぜ、全然1人制じゃないんだけど!
て言うか、なんで私!?


「あ」

勝手に狭いレジの中に侵入してきて、さっさとチェッカー側に自分の社員番号を打ち込んでいたユウくんの手が一瞬止まった。


「ようやく独り立ちしたようで。おめでとさん」


――『おめでとう』の言葉に、一瞬驚きと同時に喜びが湧きあがりかけて。

でも、そう言った彼の口端は歪に上がっていた。
祝福の言葉なんだか、遅い歩みに対する皮肉なんだか。


「……どーも。言っとくけどレジの中に入ったら、私が教える側だから」


皮肉と解釈して、皮肉で返す。
ユウくんは鼻を鳴らして――、今度こそ本当に笑った、ように見えた。