琥珀の記憶 雨の痛み

もしかして。
本当に社員さんが心配したように、ケイの周りで何かが起きているのだろうか。
本当は学校行事で忙しいなんて体の良い嘘で……?

不意に、そんな疑問が湧いた。
その可能性に気付かなかった自分の冷たさに嫌気がさす。

と同時に。
だとしたらどうして話してくれないのか――あの時『分け合おう』と約束したのに。
またじわりと重ねるように、小さくマイナスの感情が育つ。


「はぁ……」


棚上げだ。
私だって、自分の中のもやもやを全部彼女に話しているわけじゃない。


例えばナツに本音を言えなくて尚吾くんへの気持ちを押し殺そうとしていることを。
例えば世間的な決まり事を破って喫煙や夜遊びに興じるみんなを無意識のうちに蔑んでいることを。

全部をひっくるめて育ってきた環境のせいにしようとしていることを、そういう自分が嫌で変わりたいと思っていることを。


分け合うのと押し付け合うのは意味が違う。
きっと私が全部を吐露したとしてもそれはただの押し付けだ。
彼女が全てを理解して受け入れてくれるとも思えない。

……そうやって言い訳を重ねて、話そうとしない自分がいる。


仮に本当にケイに何かがあったとして、それを彼女が話してくれないからと言って、そこを責めるのはおかしいのだ。
冷静にちょっと考えれば分かることなのに。


心に育つ小さな棘を、ひとつずつ手折る。
開いた穴から空気が漏れるみたいに、くさくさとした感情はため息に変換されて体外へと霧散した。