桜が舞う4月。
わたしは、この春から中3、つまり受験生の足立里奈。
勉強ばかりで忙しい毎日。
親の期待に応えようと必死で、成績は学年1位をキープしている。

「はぁ…」
今日は3年になり初めてのテスト。
登校中、ふとため息をついた。
昨日も徹夜で勉強してたからなぁ。
「不景気なため息!」
「あ。おはよ、望結」
なかよしの望結に遭遇。
「おはよ!眠そうだね」
「テストだもーん。あー眠…ふぁ」
「さっすが」
ドン
「きゃ!」
「うゎっ」
知らない人とぶつかった。
学ランを着た男子高校生。
え、佐倉高という、超エリート校だ。
「あ、ごめんね。大丈夫?」
「はい、私こそ、すいませ…」
私も謝ろうとしたら、その人は落としたバックを拾って、すぐ駅の方へスタスタ歩いていった。
歩くのが速い。
さすが高校生、大人。
「里奈、大丈夫?」
「うん…ん?あれ?」
生徒手帳が落ちていた。
「あ、これ、さっきの人のだ」
「え、どうするの」
「明日にでも返そ。また会うだろうし」
「そだねー」

その日はテストをして、部活をし、すぐ1日が終わった。

翌日。
私は昨日のところらへんであの人が通るのを待っていた。
「あっ」
遠くから学生が数人来る。
制服がそうだから、あの人かな。
「すみません、これ昨日…」
「ん?あ、俺の!?よかったー。
拾ってくれてありがと!」
「いえいえ」
去ろうとした、そのとき。
「何、彼女?かわいいじゃん」
1人がそう言った。
「違うけど、そだね笑」
えっ?どういうこと?そだねって?
「あ、ばいばーい!ありがと」
優しい笑顔でそう言われた。
私はとりあえず会釈しといた。
ドキドキ
ドキドキ
なぜだろう。胸が高鳴っていた。

◇◇◇◇◇◇

「へぇ、じゃあ里奈はその人のこと好きなんだ」
「えぇ!」
教室で望結とそんな話をしていた。
「かっこいいんでしょ?」
「よくわかんないけど、顔は、ね」
「いいじゃん!高校もあんなすごいとこだし、お似合い」
確かに、あの高校は県内で1番頭がいい。私の志望校でもある。
色々と、手探りに思い出すだけで、どんどん気持ちが増している気がする。 


このときのあたしは、知らなかった。
ほんとうに知らなかった。
…何にも。