それに情けないけどまだ俺の中の覚悟が決まってない。

まだ、怖い。

この先に進むのが、もしかしたら実結を傷つけてしまうかもしれないから。

泣かせてしまうかもしれないから。

だったら自分の感情なんかより、もっとずっと大切な実結を優先したいんだ。

「ごめんね、颯。変なこと言っちゃって…あたしね、焦ってたの。」

焦る?

「早紀ちゃんがね、その、昂君と…えっと…」

ああ、だから昂もあんなこと言ってたのか。

まあ、あいつらも付き合ってから結構たつしな。

「バカ。」

「へっ?」

俺の発言に目を丸くする。

ほんとバカだろ。

焦る必要なんかないのに。

確かにゆっくりかもしれない。

周りから見たって山下からよく言われたように焦れったいかもしれない。

それでも俺達、少しずつだけど、ゆっくりだけど進んでる。

一歩一歩だけど確実に。

だって一年前はこんな風に抱きしめることだってやっとで。

初めてキスしたあとはお互い照れまくって。

気まずくて、実結を避けたりもしてた。

その頃から考えたら成長してる。

これからもこうして二人でゆっくり進んでいけたらいい。

うつむいたままの実結の頬に手を添えた。

すると顔を上げた。

「ありがと、颯。」

この笑顔が守れれば、俺は一番良い。

そう思ってるよ、ずっと。