そんなことされたら、止まらなくなる。

ここは実結の家でしかもリビング。

いつ真結ちゃんや日菜さんが帰ってきたっておかしくないこの状況で。

「…颯?」

俺は実結の肩をつかんで、自分から離した。

どうして?という顔で俺を見つめる実結。

「止まらなくなったら困るから。」

俺の感情を優先してお前を傷つけたくないんだ。

いつだったか昂に言われたっけ。

「颯って奥手だよな、付き合って二年以上経つのによく我慢出来てるよなー。」

我慢できてる?

俺が?

そんなわけないだろ。

ほんとは感情抑えんのにどれだけ精一杯か。

実結に触れたくて、もっともっと近づきたくて。

「いいよ、あたし…颯となら、いいもん。」

俺の服の裾をぎゅっとつかんで俺の背中に頭をうずめた。

実結はわかってない、キスの先のことを。

俺の醜い感情を。

「あたし、ちゃんとわかってるよ。だから…」

まるで俺の心を見透かしたかのように、応えた実結。

それでもやっぱり…

「待て、今は無理だろ!ここはリビング!」

こんなことこで出来るわけねえだろ!

ほんと、誰か帰ってきたら洒落になんねえ!

「あっ、そっか!ごめんね。」

やっぱり実結の天然は質が悪い。