『もしもし!颯!あいつ誰!?』

「こっちが聞きたい。つかお前どこにいんの?」

『今、駅のちか…あっ!あーーっ!』

あまりにもうるさくて、電話口から耳を遠ざけた。

「なんだよ、うるせえな。」

『電車に乗っちゃったよ、もう追跡できない!』

追跡できないって…そんなことしてたのかよ。

暇なやつだな。

「もう切るぞ、じゃーな。」

『おい!いいのかよ!実結ちゃん、浮気してるかもしれないんだぜ!?』

昂、お前やっぱり馬鹿だろ。

「あいつにそんな器用なことできねえよ。」

そう言うと俺は電話を切った。

とはいえ、誰なんだ?

実結に男友達が多いとは思えないし、いたとしてもまあ、昂とか疾風、後は…あの市川さん?だっけ。

その幼なじみと話してるのはよく見かけるけど。

…葵は帰国してるはずないし、そもそも背格好的に全員当てはまらないくらい小柄だった。

年下の男か?

昂には気にしてないふりしたけど、実結のこと疑うわけじゃないけど、本当はかなり気になってる自分がいる。

こういう時は、バスケするのに限る。

けど、外は雪。

仕方ない、高いけど市民体育館を借りるか…

そう思って身支度をしてスポーツバッグを持ち、外に出る。

ちょうどエレベーターが上がってきた。

今日はついてんのか、ついてないのかわかんねえな。